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移住者インタビュー

ファッションとSUP。故郷に戻っても、キャリアと「好き」を仕事に活かす

SUPヨガインストラクター/パーソナルスタイリスト/呉市職員
地域おこし協力隊OG
鈴木 淑子さん

2021年 大阪府 → 呉市安浦町
Uターン
家族1人(単身)

interview:2026.05.31

平日は市職員として働き、休日はSUPヨガインストラクターやパーソナルスタイリストとして活動する鈴木淑子さん。大阪などでアパレルの経験を積んだ後、地域おこし協力隊として地元・呉市安浦町へUターンしました。地域おこし協力隊での活動や葛藤、都会で培ったキャリアを生かして切り拓いた働き方、そして安浦で暮らす魅力についてお聞きしました。

移住前はどんな仕事をしていましたか?

高校卒業後に大阪へ出て、アパレル業界で約15年働いていました。若い頃は「VOGUEのスタイリストになりたい!」という夢を抱き、販売やスタイリングの仕事に没頭する日々。東京やパリ、ロンドンで仕事をする機会にも恵まれました。

大阪時代は、頑張れば頑張るほど成果が出ることに喜びを感じる一方で、仕事に向かう朝にお腹が痛くなったり、涙が出てしまったり…。今振り返ると、心身に限界が来ていたんだろうなと思います。

その後、個人のお客様にファッションを提案するパーソナルスタイリストになることを決め、資格を取得しながら活動していました。

移住のきっかけは?

大阪で離婚を経験し、これからどこでどう暮らしていくかを考えたとき「海が身近にあって、人が優しい故郷の安浦に帰りたいな」と思ったんです。

地域おこし協力隊の制度は、大阪にいた頃から知っていました。帰省時に、下蒲刈島で協力隊をしていた高島俊思さんのイベント撮影をお手伝いしたこともあるんです。

「これまで培ってきたファッション関連のスキルを活かしながら、新しいことにもチャレンジしてみたい」。そんな思いから2021年に地域おこし協力隊に応募し、合格。2022年4月にUターン移住し、地域おこし協力隊として3年間活動しました。

地域おこし協力隊ではどんな活動をしていましたか?

「ファッションとSUPでまちを盛り上げる」をコンセプトに掲げ、パーソナルカラー診断やメイクのレッスンを個人向けに行ったり、地域のお祭りに出店したりしていました。

今ほど知られていなかったパーソナルカラー診断ですが、地方でも意外と需要があったんですよね。「安浦でファッション系の仕事をしている移住者」という珍しさから地元メディアが取材してくださったことも、活動を知ってもらうきっかけになったと思います。

SUPは18年前に和歌山県で体験したことがあったのですが、瀬戸内に戻ってきてからどんどんハマっていって。協力隊の任期中に、SUPヨガインストラクターの資格と船舶免許も取得しました。地域活性化につながるのであれば、新しい資格取得にも挑戦させてもらえたので、すごくありがたかったですね。SUPに触れてもらうイベントもいろいろと企画していきました。

活動する中で悩みはありましたか?

いちばん悩んだのは、自分がやりたいことと、地域に求められていることのバランスです。

私はSUPとファッションを軸に、親子世代や若い世代をターゲットにした企画を展開したいと考えていました。けれど、安浦まちづくり協議会は高齢の方が中心。地域おこし活動をする上で深く関わる協議会の方向性と、自分の思いをどう結び付けるかが難しかったですね。

要望に応えるだけの日々が続くと、「私はいったい何をしているんだろう」と感じるようになって…。何をやっても空回りしている気がして、正直、「安浦を脱出したい」と思った時期もあります。

それに、SUPやファッションを仕事にしていると「楽しそうだけど、何をやっている子なの?」「遊んでいるだけじゃないの?」と見られることもありました。でも、そんな時に背中を押してくれたのも、地域の方々だったんです。

その悩みをどのように解決していきましたか?

悩んでいる状況でも、応援してくださる人は確かにいて。地域のおじいちゃんたちから「あなたが安浦を元気にしようと真剣に取り組んでいることを伝えるために、地元のみんなにSUPを見てもらったほうがいい」とアドバイスを受けたんです。

そこで真冬のある日、地元の人が集まる催しに合わせて、安浦の海水湖でSUPの実演を行いました。その様子が新聞や回覧板にも掲載され、私の思いや活動を知ってもらうきっかけになったんです。

その後も協議会の方々とコミュニケーションを重ねながら、お茶の先生と一緒に着物でまちを散策するイベントや、餅つきの後にSUPを体験してもらうイベントなど、「地域が求めること」と「私がやりたいこと」を掛け合わせた企画を少しずつ形にしていきました。

隊員活動を通じてまちとの関係が築けたこと、また両親の近くにいられる安心感から、隊員卒業後も安浦に定住しようと決めました。大変なこともあったけれど、いつも力を貸してくださる地域の皆さんには本当に感謝しています。

今後は、若い世代にもっとまちづくりに参加してもらえたらうれしいですね。SUPをイベント会場まで運ぶだけでも一苦労なので、そういう意味でも若い力が必要です(笑)。

地域おこし協力隊を検討している人にメッセージをお願いします。

地方移住を考える上で、ワンクッション置くのに良い制度ですよね。3年間、実際に住みながら地域のことを知って人とのつながりを作ることもできるし、資格の取得サポートもあるのでスキルアップにつながります。

私も固定給が保証されていたからこそ、新しい企画や資格に安心してチャレンジできました。「故郷で何かやりたいけれど、いきなり移住するのはハードルが高い」という人にぴったりだと思いますよ。

現在はどんな働き方をしていますか?

平日は市職員として働き、週末は安浦にあるアウトドアショップ「KGS outdoor」のSUPヨガインストラクターとして活動中です。子どもから大人までを対象に、七浦海水浴場で教えています。SUPは季節を問わず楽しめるスポーツなので、レッスンは年間を通して行っていますね。

また、パーソナルカラー診断やショッピング同行など、パーソナルスタイリストとしての仕事も続けています。移住した当初は、広島市内のアパレルショップで働くことも考えていたんです。でも、KGS outdoorがアウトドアファッションも扱っていることから、商品の仕入れの相談やオリジナルTシャツの企画、お客様へのコーディネート提案など、地元でアパレル経験を活かした仕事ができています。

SUPヨガの魅力は?

SUPヨガの魅力は、地球と自分が一体になれるような感覚を味わえるところ。多忙な日々を送っていると、呼吸が浅くなってしまいがちです。特に「息を深く吐く」という行為は、意識しないとなかなかできないんですよね。

海の上でヨガをしている間は自分の体に意識が向いて、自然と深い呼吸ができるようになります。波に揺られていると、まるでお母さんの胎内にいるような感覚に包まれるんです。これは穏やかな瀬戸内海だからこそ得られる感覚じゃないかなと思いますね。私自身、移住前は運動もファッションの一部という位置づけでしたが、今は心身を整えるためのものに変わりました。

また、SUPの競技人口はまだそこまで多くないので、全国各地のレースにも参加しやすく、世界的な選手とも交流できるところも魅力です。世界レベルの選手を地元に呼んでレッスンしてもらったり、自分たちで「SUP Fishing大会安浦CUP」を開催したり、SUPを通じて地元を盛り上げる活動を続けています。

大阪での暮らしと比べて、安浦での暮らしはいかがですか?

お給料だけで比べると、正直に言えば大阪の方が良かったです。主婦を経て安浦に戻ってきましたが、もしバリバリ働いていた若い頃に移住していたら、ギャップの大きさについていけなかったかもしれません。

でも、安浦は野菜や料理をおすそ分けし合うような、あたたかな助け合いが根付いているので暮らしやすいです。もちろん都会でも友人や仕事仲間と助け合って生きてきたけれど、どちらかというと「情報交換」という面が強かったですね。

何より、このまちは海と山が本当に近い! どちらも自宅から車で10分ほどです。SUPレッスンをしている七浦海水浴場は市街地から少し離れたところにあって、静かで落ち着く場所。リフレッシュしたいときは、緑豊かな野呂山へきれいな空気を吸いに行くこともあります。その日の気分で、海にも山にも足を運べる暮らしが気に入っています。

移住前と移住後で、ご自身に変化はありましたか?

今のほうがリラックスして生きていると感じます。大阪時代の私はもっと尖っていたから(笑)。どっちの自分も好きですけどね。

厳しいアパレルの世界で「さらに上を目指したい」と、ある意味自分を追い込みながら働いてきたからこそ、今は「楽しい」という気持ちを大切に、頑張りすぎなくてもいいのかもと思えるようになりました。あるがままで生きていることが幸せなんです。

ご近所さんからいただく採れたての野菜や、スーパーに並ぶ新鮮な魚も本当においしくて、食べることがより楽しくなりました。それにSUPはすごく体力を使うので、お酒を飲む量も減りましたね。移住後は「好き」を仕事にしながら、すこやかな暮らしを送ることができています。

これから挑戦したいことはありますか?

まずは、SUPヨガのインストラクターを養成すること。空と山に囲まれ、透き通った安浦の海で体験するSUPヨガの心地よさや、心身が整っていく感覚をもっと多くの人に知ってもらいたいんです。

それから、パーソナルスタイリストとして、30〜40代の地元女性を中心に依頼が増えているショッピング同行にもっと力を入れたいですね。その人の魅力を引き出す色やデザイン、体型カバーとトレンドのバランスなどを提案しながら、服選びのお手伝いをしていきたいです。

また、現在も安浦まちづくり協議会の広報誌づくりに携わるほか、「呉市移住者交流連絡協議会(KURETO協議会)」のメンバーとして移住者交流会などに関わっています。私がまちを案内したことがきっかけで地域おこし協力隊への応募を決め、今は安浦地区で活動している人もいます。

移住者である私自身の経験やネットワークを活かしながら、「イベントをやってみたい」という相談があれば会場を提案したり、「こんな知見を持っている人がいるよ」と紹介したりすることで、移住を考えている人や新しく住み始めた人の力になれたらと思っています。


鈴木さんのお気に入りスポット

呉の端っこに位置する安浦はあまり広く知られていないけれど、おいしいお店がたくさんあるんですよ。

渋い佇まいの居酒屋「小鰯」をはじめ、豊富なメニューがそろう「ドライブイン灘」、うどんと唐揚げがおいしい「やまき醤油蔵」、ラーメン屋、パン屋など、ぜひいろんなお店を楽しんでほしいです。

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