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移住者インタビュー

カフェや商品開発を通して、地元の人々とともに地域課題を解決

天本 雅也さん

2015年 神奈川県 → 広島県呉市倉橋町
福岡県出身
STORBRIDGE代表
家族3人 妻・子ども1人

interview:2022.12.12

広島県の最南端に位置する島であり町でもある倉橋島の倉橋町までは、呉駅から『音戸大橋』を渡り、車で約1時間。神奈川県横浜市から倉橋町へ家族で移住した天本雅也さんは、日本の渚百選にも選ばれている桂浜沿いにブックカフェを開業したほか、地域資源を活用した商品の開発・販売を手掛けるなど、地域の課題解決に向けたさまざまな取り組みを行っています。移住のきっかけ以外にも、倉橋の風土や教育環境などについて天本さんに教えてもらいました。

倉橋町に移住したきっかけは?

妻の地元である倉橋を初めて訪れたのは、15年ほど前。海がきれいで、のんびりとした空気感がすごく良いなと感じました。同時に、島の人口が減っていると聞き「素敵な場所なのに、もったいないな」とも思いましたね。当時は移住しようとまでは考えていなかったのですが、その後も倉橋の魅力と「もったいない」という気持ちが心の中に残っていたんです。

僕は外資系医療メーカーで働いていて、横浜に住んでいました。移住の決め手はいろいろありますが、まず勤務先で担当していた大きな仕事が一区切りついたこと。もともと新しいことにチャレンジするのが好きな性分なのもあり、帰省などで何度か倉橋を訪れる中で抱いた「ここで何かできないか」という想いを実現するチャンスじゃないかと考えたんです。

定年後だと自分の体力的にも、また年間150人ペースで人口が減っているという島の体力的にも遅いだろうと思い、2015年に家族で倉橋に移住してきました。

移住後の仕事について教えてください。

妻の実家は『シーサイド桂ヶ浜荘』という旅館を経営していて、妻のお父さんが30年前に、旅館に隣接した喫茶店を営んでいたんです。喫茶店は、海岸が目の前に広がる絶好のロケーション。移住前に、もう使われていない店内で窓を開けてビールを飲んでいるときに「最高の場所だな」と感じて。

旅館というのは、島外・県外の人が来るところ。もっと地元の人も集まれる場所にしたいと思い、呉市の創業支援制度を活用して喫茶店跡を改装。『seaside cafe ALPHA』として新たにオープンしました。『ALPHA』とは、お父さんの喫茶店から引き継いだ名前です。

倉橋には、高い透明度を誇る桂浜の海、緑豊かな山、おいしい農産物や海産物などたくさんの魅力があるのに、外に向けて発信する力が足りていない。カフェの開業は、広報的な意味合いも兼ねているんです。景色の良さや地元食材を使ったメニューを通して、島外・県外の方に倉橋の魅力を知ってもらいたい、島ににぎわいをつくりたいと思っています。

カフェで地元食材を使うにあたって、地域の生産者さんたちとつながりが生まれていきました。彼らの話を聞くうちに、「地もの野菜や地魚、自社商品をどう売っていけばいいのか?」という課題を抱えていることを知ったんです。

そこで立ち上げたのが、地域商品の開発・販売を手掛けるブランド『倉橋ZIMAE』。倉橋の蔵元が醸造している醤油のラベルをリニューアルしたり、お土産に最適なミニサイズを作ったり、地域産品に新しい価値を付けてネット等を活用して販売することで課題解決に一役買いました。

また倉橋島産の知られざる山海の幸をPRする方法として、2019年には『倉橋島お宝フリット』という企画も行いました。シロザメやボラなど、おいしいのに知名度が低い地魚や、これまで廃棄されていた摘果トマトなどの地もの野菜を活かしたフリット料理を、島内の飲食店などで提供する取り組みです。

レシピの考案は、広島にゆかりがあり、東京・代官山でイタリアンレストランを営む樫村仁尊シェフ。樫村シェフが島内で開いた料理教室に約30名の方が参加してくださり、地元の方々から多くの協力を得てPR企画を実現することができました。

実際に移住してみて倉橋町の印象は?

倉橋は愛媛県や山口県とも近く、造船業や要路寄港地として栄えた町。昔から島外の人との交流が多い土地だからか、移住者を自然に受け入れてくれる人が多いと感じます。新しい取り組みをする30代くらいの移住者が珍しかったようで、地元のおじいちゃんたちが僕らのことを面白がってくれて、声をかけてくださったり。閉鎖的な雰囲気がないんですよね。

僕自身は福岡県で生まれ育ち、移住前は横浜に住んでいたので、倉橋に知り合いは妻の家族以外まったくいませんでした。けれど初対面の会合などは嫌いじゃないので、ボランティアや地域団体の集まりに誘われたら積極的に参加するようにしていましたね。皆さんとても良くしてくださって、『倉橋島お宝フリット』などの企画を実現できたのも、さまざまな地域コミュニティでつながったご縁のおかげなんです。

どんな想いで地域づくり活動に取り組んでいますか?

根底には「自分が住む町を楽しい場所にしたい」という想いがあります。自転車で行ける距離に、良い店がたくさん集まっているのが理想です。地域を盛り上げることで、倉橋でお店をやりたいと考える人が増えてくれたらいいなと思いますね。

自然がきれいで、おいしいものがあって、行政も親身になってくれて…という地域は正直、日本全国にたくさんある。その中でいかに差別化していくかが、倉橋を盛り上げるために必要なことだと思うんです。
差別化のカギとなるのは、住民や町の歴史といった、他の地域には真似できない部分。外からの人を受け入れる風土や、何百年も変わらない『桂浜』の風景など、倉橋ならではの魅力を新しい見せ方で発信していきたいです。

それから、事業を通して「経営がしっかりできたら地方でも暮らしていけるよ」と伝えたいですね。田舎でカフェを軌道に乗せるのは難しいというイメージがあるかもしれませんが、都会の激戦区に比べて競合は少ないし、今はSNSで情報発信ができる。わざわざでも訪れたくなる店づくりをすれば、開業する場所は関係ないと思います。

倉橋町の教育環境について教えてください。

移住した当時、子どもは2歳でした。横浜だと幼稚園一つとっても、例えば英語教育に強い園、のびのびと自主性に任せて育てる園など、選択肢がたくさんあります。でも、倉橋の保育園や小中学校はそれぞれ1ヶ所しかない。正直、「地元の保育園や学校が我が子に合わなかったらどうしよう」と不安ではありました。

結局、うちの場合はですが、その心配は杞憂でした。倉橋の小中学校では、地域の人が講師となって地域について学ぶための授業を行っているんです。島内の高校は、隣の音戸町に1校あるだけなので、中学を卒業した子どもたちの多くが島外に出ていく。島外の中学校に進学する生徒も増えています。子どもたちが倉橋島内で学ぶ期間って、実は短いんですよね。

そこで倉橋の小中学校では、地元の歴史や文化、産業などの地域学習に力を入れることにしたそうです。地域の人たちが授業を受け持つこともあり、僕も移住者目線での授業をさせてもらっています。2022年度は『倉橋八十八ヶ所巡り』のクイズラリーを中学生と一緒に作成しました。島の中心部にある火山(ひやま)に設置された88体の石仏を実際に巡って、問題を考えてもらいました。今後は、倉橋の広報ウェブサイトを生徒たちと制作する予定です。

生まれ育った地元について深く知っているほうが、他のまちに行った際に「これってうちの地元だけの特色なんだ」「よその地域にはこんな文化があるんだ」といった気付きが増えて、おのずと多様性について考える機会も増えると思うんです。僕個人としては、子どもたちは将来、倉橋に必ずしもUターンしなくてもいいと思っていて。都会のスピード感や情報量なども経験した上で、自分がどんな場所で生きていきたいのかを考えればいいんじゃないかな。

それから、先生方が親身なところも魅力。以前、僕が知り合った移住希望者で教育面に不安を抱えている人がいたんです。その場ですぐ先生に電話して、「それなら現場を実際に見においで」とトントン拍子に学校見学が決まったことも(笑)。学校側が親の不安を受け止めて、寄り添った行動をしてくださるんです。

どんな人が移住に向いていると思いますか?また、移住したい人に伝えたいことはありますか?

新しいことを始めたい人、自分で仕事を生み出したいと考えている人ですかね。もちろん企業に勤める道もありますが、倉橋では自ら事業を立ち上げて運営できる人のほうが合っていると個人的には思います。

一つの会社にいると、自分のスキルがどんな風に社会に役立っているのか見えにくいですよね。でも、まちづくりの仕事は、自分が携わったことで地域がどう変化したかがダイレクトに分かる。これまで培った経験を活かせる場面が、きっとあると思います。
だから、いまはまだ、なにからしたらいいかわからない段階でもぜひ来てほしいですね。

今後の取り組みについて教えてください。

二つあります。

まず一つ目は、倉橋町の特産品『お宝とまと』を使った新商品の開発。30年ほど前からブランド化しているトマトで、広島県外にはあまり出回っていませんが、歴史あるブランド野菜なんです。
農家さんや漁師さんも世代交代が始まっていて、『倉橋島お宝フリット』の企画などをきっかけに、若手の生産者さんから相談を受けることが増えました。『お宝とまと』も、広島県と若手農家さんが「もっと幅広い世代に食べてもらいたい」と相談を持ちかけてくださったんです。

単発で終わるのではなく、地域の課題解決に貢献し続けたいとの想いで始めた企画だったので、こうして生産者さんと新しい取り組みができるのはうれしいですね。トマト農家の方と樫村シェフ、地元のスーパーマーケットさんなどと一緒に、『お宝とまと』のおいしさをより多くの人たちに伝える商品やイベントを検討中です。

もう一つは、呉市全体の魅力を「面」でPRすること。僕は今、呉市への移住者や移住希望者のサポートをする「呉市移住者交流連絡協議会(通称KURETO)」の代表も務めています。

呉市は島だけでなく山間地域、利便性の高い市街地もある、広くて多様性に富んだまち。もし倉橋に住みにくさを感じたとしても、呉市内の他の町ならしっくりくるかもしれない。そんな呉市ならではの利点をPRするためにも、島と山の両方を訪れたり、市街地でリモートワークを体験できたりする中長期滞在ツアーを開催できたらと思っています。

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