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移住者インタビュー

学者志望から農家に転身。無農薬レモンの栽培に挑戦

西村 達哉さん

2016年 中国(海外) → 広島県呉市蒲刈町
広島県出身
レモン農家/七国見山養蜂園 代表

interview:2023.01.18

柑橘の栽培が盛んな安芸灘とびしま海道の島・上蒲刈島。幼少期を過ごしたこの島にUターン移住し、レモン畑と養蜂園を営んでいる西村達哉さん。過去には学者を目指して大学院に進学し、留学先の中国で13年間ビジネスをするなど、農業とは縁のない人生を歩んでいましたが、古い知り合いに誘われたことをきっかけに農家に転身しました。持ち前の柔軟性と聡明さで、無農薬・除草剤不使用のレモンや加熱処理などを一切しない新鮮なはちみつという、付加価値の高い農産物を作っています。

上蒲刈島で柑橘農家になった経緯を教えてください。

生まれてから中学卒業まで、ここ上蒲刈島で過ごしました。その後は島を出て広島市内の高校、広島大学へと進学。大学院では教授の勧めで中国教育史の研究を始めて、中国に留学したんです。大学院在学中に起ち上げたECサイト事業が好調だったので、留学先の中国でも現地事務所を運営していました。また、修士号を取得していたので、中国の大学で講師をするなど、忙しかったけどその分充実していました。

広島市内で祖父が経営している家業を手伝うことになり、2016年に帰国しました。しばらくは実家の仕事を手伝いつつ、時間に余裕があったので週末は上蒲刈島で農業をやるようになったんです。幼少期に可愛がってくれていた近所のおじさんが畑を手放すということで、「畑を譲るから農業をやってみないか?」と誘われたのがきっかけでした。
おじさんの農地を借り受けて、最初は家庭菜園の気分でミカンや不知火(しらぬい)などの柑橘栽培を始めたんですが、思った以上に大変で。月の半分は上蒲刈島に滞在して、畑仕事をする生活になっていきました。分からないことはおじさんに教わったり、農業研修に参加したりして、2年ほど半農半Xの暮らしを続けました。

その後、島内の別の農家さんから条件の良い畑を借りることになりました。予想以上に広い農地だったので、同業者に相談しながら、「まずは5年間、本腰を入れて農業をやろう!」と決意。安定した需要があるレモンを栽培しようと考え、約70aほどの敷地にレモンの苗木を植えていったんです。5年やってダメだったら農家を辞めて別の仕事をしようと考えていましたが、何とか7年目を迎えることができました。

大学時代は学者になりたいと思っていたのに、気付けば全く想像もしていなかった方向に人生が進んでいました(笑)。「面白そうだな」と感じたらとりあえずチャレンジしてみる性分なんです。自分だけで解決しようとせず、困ったときには周りの人に知恵を借りることが、島暮らしにも就農にも大事なマインドかなと思います。

就農にあたり、どんな支援を利用しましたか?また利用して良かったと思うことは?

JA広島果実連による新規就農者向けの研修制度や行政の補助事業を活用しました。さまざまな種類の柑橘類の栽培方法を教えてもらえたり、助成金を受けることができたりと、就農後の支援も充実していてありがたかったですね。経営面に関しても研修で就農計画の作成から指導してもらいましたし、広島県のサポート制度で出会った経営指導員さんには今でもお世話になっています。そして作った農産物はしっかり売っていかなければいけないので、呉市主催の経営の基礎を学べる販路拡大セミナーにも参加しました。

研修やセミナーに参加することで知識や技術が身につくのはもちろん、頼もしい人脈を築けたのも大きなメリットでした。私はレモン栽培だけでなく養蜂も手掛けているのですが、これも柑橘栽培の研修で出会った仲間に相談して始めたことなんです。
当たり前ですが、農業は自然相手の仕事。豪雨や寒波等で大きな被害を受け、収穫量が激減することもあります。収益を安定させるためには、レモン以外にもう一つ事業の柱となるものが必要だと考えていたときに、研修仲間の一人に「はちみつ生産は意外と難しくないよ」と勧められたんです。彼が江田島で経営している養蜂場で1年間勉強させてもらった後、上蒲刈島で『七国見山養蜂園』を開業しました。

また販路拡大のために、広島市内などで開かれる商談会には積極的に足を運んでいます。直接会って話すことが取引につながるので、いろいろな場所やコミュニティに顔を出すことが大切だと思います。

西村さんの農業へのこだわりを教えてください。

レモンもはちみつも、「何を聞かれてもまっすぐに答えられる栽培方法」をモットーにしています。

レモンの栽培には、農薬と除草剤は使っていません。レモンは皮ごとお菓子や料理に用いられることも多いので、化学薬品に頼らず育てていることが付加価値になるんです。オーガニックなどの体にやさしい農産物の需要は今後も確実に高まっていくでしょうから、夏場の草刈りなど大変な手間がかかる上に収穫量も少ないですが、商品価値を上げるために無農薬・除草剤不使用にはこだわっていきたいですね。

『七国見山養蜂園』のはちみつは、「いつ」「どこで」採れたものか分かるのが特徴です。また、畑が密集していない山中に巣箱を置くなど、できるだけ農薬の影響が少なく済むよう配慮しています。
ミツバチが里山で集めてきた自然の恵みをそのままお届けするために、加熱処理などの加工を一切せずに瓶詰めしています。花の香りがして、その年、その季節だけの風味が楽しめるんですよ。

島での暮らしや農業をすることの魅力は?

農業の魅力は、時間が自由に使えることでしょうか。もちろん自然相手の仕事なので、やらなければならないことは毎日たくさんありますが、会社のように勤務時間に縛られることはないですし、田舎ならではののんびりとした時の流れを体感できます。

それとやっぱり、上出来なレモンやはちみつを収穫できたときや、お客さまに「おいしい」と言っていただけたときはうれしいですね。日々の苦労が報われます。私は自分がすべて責任をもって事業を進めていくが好きなので、農家は意外と向いていたのかもしれません。

島暮らしの魅力は、一つはこの景色ですね。青い海と空を柑橘畑の黄色やオレンジの果実が彩る、のどかな島の風景に癒やされます。うちの畑は山の斜面にあるため、眼下に広がる海を眺めるたび「あぁ、良い場所だな」と思いますね(笑)。私はキャンプが趣味なので、畑の近くでデイキャンプをよくするんですよ。広島市内や呉市街地に住んでいる友人がキャンプをしにやって来ることも。アウトドア遊びが好きな人は存分に楽しめる場所だと思います。

それと、人が多すぎないことが私には楽ですね。中国にいたときはとても人口の多い新興都市に住んでいたので、静かでのどかな今の島暮らしが丁度良いです。ただ、さみしさはありますね。友人は島から出てしまっているので。

でも、父は広島市内に住んで事業を営んでいるので、私も月に1~2回ほどそちらに帰って、高校時代の友人たちと休日を過ごすこともありますよ。商談会や、都市部のお客さまのもとにもすぐに行けるので、広島市内にも拠点があるのは便利ですね。とはいえ上蒲刈島から広島市の中心部までは広島呉道路(クレアライン)を使って車で1時間ほどの距離なので、私のようなケースじゃなくても、ゆったりした島暮らしと都会の利便性の〝いいとこどり〟は可能だと思います。

今後の目標を教えてください。

まずは、農業一本で食べていけるロールモデルを作ること。農業に参入するとき、私がいちばん知りたかったのは経営や収益の仕組みでした。やってみないと分からないことだらけだったので、これから上蒲刈島をはじめ呉市内の島で就農したい人が、「こんな風にやってみたらいいんだ」と参考にできるカタチを整えることが必要だと思っています。

収益を上げていくため、今は6次産業にも積極的に取り組んでおり、島内に柑橘の加工場を開設する予定です。そのためには資金が必要なので、国の事業再構築補助金に申請中です。6次産業に力を入れるといっても、どんな商品だったら島外の人、県外の人が買ってくれるのかをきちんと検討することが大切。いろんな人に相談して、レシピ開発やモニタリングなどを通して魅力的な商品を作っていきたいです。

また、私は呉広域商工会の会員でもあるのですが、とびしま海道の島々や呉市のオリジナルブランド商品の開発や、呉広域商工会エリアの商品を集めたマルシェを開催できたらと考えています。
とびしま4島(大崎下島、豊島、上蒲刈島、下蒲刈島)や倉橋島・江田島で頑張っている若手農家たちで集まって、今後について話し合う機会も多くて。「地域を盛り上げるために、また、就農のハードルを下げるために何かしなきゃ!」という想いを持っている地域の人々と、例えば「観光×農業」のコンテンツ作りなど、新しいことに挑戦したいですね。

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