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移住者インタビュー

想像以上に楽しくて、心地よい。一度離れたからこそ分かる呉の魅力

小野 香澄さん

2015年 東京都 → 広島県呉市中央
広島県呉市出身  Uターン
地域コーディネーター

interview:2023.10.16

テレビディレクターになりたいという中学時代からの夢を叶えるため、東京でテレビ番組の制作会社に就職した小野香澄さん。ディレクターとして着実にキャリアを積み上げつつも「深呼吸できる場所で暮らしたい」と生まれ故郷の呉にUターンしました。現在は前職の経験やスキルを活かしながら、地域コーディネーターとして市民活動に取り組む人々をサポートしています。「呉は心地よくて面白い街」と話す小野さんから見た呉の魅力とは?

小野さんの経歴を教えてください。

呉市で生まれ育ち、東京の大学に進学し、東京の会社に就職しました。私は子どもの頃から『笑ってコラえて!』というテレビ番組が大好きで。「道行く一般の人に声をかけて話を聞くだけで、こんなにも面白いなんてすごい!」と思っていました。自分もこの番組を作る人になりたいと思っていた中学時代、NHKの女性ディレクターさんのお話を聞く機会があったんです。取材で全国を飛び回っている彼女と話したことで「知らない誰かに会いに行き、その人が何を考え、どう感じながら生きているのかを聞く」という仕事にますます憧れを抱きました。絶対にテレビディレクターになりたいと思い、この頃からテレビ局の採用情報を調べていましたね(笑)。

大学を選んだ理由は、校風が肌に合いそうだと感じたからです。大学卒業後は「テレビの仕事をするなら東京か大阪だろう」と考え、2008年に東京の番組制作会社に就職しました。幅広い選択肢とやりたいことがたまたま東京にあっただけで、別に都会に憧れていたわけでも呉を出たかったわけでもないんです。大きなフィールドで経験を積んで、ゆくゆくは地元に戻ろうと思っていました。

呉にUターンした経緯を教えてください。

就職先はさまざまなテレビ局の番組制作を手掛けている会社で、私が最初に担当したのは通販番組でした。たくさんの中小企業へロケに行って、商品に対する想いや企業理念などを聞くのが楽しかったですね。その後はボートレース中継番組のディレクターとして全国出張しながら業務をこなしていたのですが、ルーチンの多い番組構成が私には合っていなくて精神的にまいってしまって…。

ある日『ボートレース宮島』への出張があり、久しぶりに広島の空気を吸ったら疲弊していた心が落ち着いたんです。そのときから「やりたいことがある場所に住むのも良いけれど、呼吸するだけで心地よく感じる場所を選ぶのも大事なんじゃないか」と思うようになりましたね。私にとって深呼吸できる場所は広島で、潮風が香る故郷の呉が好きだと再認識したんです。

また、東京で東日本大震災を経験したことも大きいですね。会社で激しい揺れに襲われたとき、「ここで死にたくない!」「身内が突然亡くなる思いを家族にさせたくない!」と強く思ったんです。震災を通して、今すぐは無理でもいつか必ず地元に帰ろうと改めて思いました。

震災後はテレビ局に出向して経済ニュース番組のディレクターを務めていました。日本各地の企業、商店街や医療現場などに取材に行き、集めた素材で映像を構築していくのは本当に楽しかったですね。

この仕事をもっと極めたい気持ちもありましたが、30歳を迎えてこれからの人生を考えたときに「朝に起きて夜に寝る」という普通の生活がしたいと思ったんです。テレビの仕事は大好きだけれど、激務で昼夜逆転に近い生活を送っていましたから。母から初めて「本当に帰ってくるの?」と聞かれたことも決め手の一つでしたね。2015年12月に8年間勤めた制作会社を退職し、呉に戻ってきました。

呉での職探しはどうでしたか?

帰郷することを決めた当初は「呉で何の仕事をすればいいんだろう?私に何ができるんだろう?」という不安がありました。広島県内でテレビ関係の仕事に就くとしたら、やっぱり広島市なんですよ。学生の頃からいずれは地元に戻って高齢になる家族をサポートしたいという気持ちがあったし、生活リズムを乱したくなかったので、番組制作の仕事からはいったん離れることを決め、呉市内で職探しを始めました。

とはいえ、なかなか「コレ!」という仕事には出会えず…。そんなとき高校時代の友人から『NPO法人 呉サポートセンターくれシェンド』がスタッフを募集していることを教えてもらったんです。『くれシェンド』は呉市からの受託で『呉市市民協働センター』を企画運営しているNPO法人です。呉地域で活動する市民団体やボランティアなどを支援しながら、まちづくり事業なども請け負っています。民間・行政の両方に携わる組織なので「呉のことをちゃんと知りたい」と考えていた自分に合いそうだと思い、すぐに面接を受け、2016年1月から勤務することが決まりました。

『くれシェンド』での仕事について教えてください。

『呉市市民協働センター』が発行しているニュースレターの制作では、呉でまちづくりや子育て、福祉などさまざまな活動をされている方々にインタビューして、取り組みの内容や想いなどを詳しく紹介しています。そのほか呉市中央地区商店街活性化事業『レンガイロプロジェクト』にも、プロジェクトマネージャーとして携わっていました。転職後の勤務時間は9時~17時。プライベートの時間を確保でき、規則正しい生活を送れるようになりました。

今はプロジェクトと人、団体などをマッチングさせる地域コーディネーターの仕事がメインです。3年前にフリーランスとして独立し、『くれシェンド』から一部業務委託を受ける形で働いています。市民活動の交流・連携拠点である『くれシェンド』は、市民がこの街で実現させたいことを後押しする組織。私も他のスタッフも「こんなことがやりたい」と相談を受けた際に「この人/団体と一緒にやってみるのはどう?」と繋ぐほか、市民の方々に「地元でこんな取り組みをしている人がいますよ」と広く知ってもらうことに力を入れています。

東京で培ったスキルを呉で活かせる場面はありますか?

知らない人に会いに行って話を聞かせてもらうこと、企画に必要なパーツを集めて実現への道筋をつけること、「私はこうしたい」と「あなたはどうしたい?」をすり合わせる交渉力などは今の仕事にも役立っています。テレビディレクターとして培ってきた経験とスキルが、地域コーディネーターに求められる能力と合致していたんですよね。移住を検討している人には「地方では思ってもみない形で自分のスキルが活かせるよ」と伝えたいです。リモートワークなど働き方も選べる時代ですし。

小野さんが思う呉の魅力は?

店主さんが誇りをもって営んでおられるお店が多いですね。Uターン当初、商店街のことを知る目的でさまざまな飲食店にランチを食べに行っていたんです。そのとき呉には美味しくて面白い個人店がたくさんあると気付いてワクワクしました。値段が安いわけではないけれど、どこも対価分かそれ以上の美味しさを提供してくれる。アパレルショップや雑貨店も個性あふれる素敵なところばかりです。

また、中心市街地から山の風景が毎日見えるのも精神的にすごく良いですね。東京では街路樹やテレビで季節を把握していたけれど、呉に戻った今は山肌がピンクに色づいてきたから春だな、樹々の緑が濃くなって夏が近づいてきたな、と山を見て季節の移り変わりを感じています。山だけでなく、街と海が近いところも良いんですよね。船がぷかぷか浮かぶ港とダイナミックな造船所、海上自衛隊の基地が織りなす景色は呉ならでは。車で30分ほど走れば、美しい海に囲まれた島に行けるところも気に入っています。視界に入るものや吸い込む空気って、生きる上ですごく大事だなとUターンしてから改めて実感しています。

そして医療体制が整っている点も大きな魅力ですね。呉にはオペができる病院が複数ある上、島と街が橋で繋がっているから島しょ部にも救急車が来てくれる。私も日本各地を取材して知ったことですが、呉のように医療機関が充実している地方は貴重なんですよね。

Uターン前と後で、イメージと違った点はありますか?

ニュースレターの取材や地域コーディネーターの仕事、それから呉の銭湯・スタンド(※スナックの呉での呼称)マップ作成や映画上映会といった個人的な活動を通して本当にたくさんの人と出会い、なぜ地元でその活動をしているのか、この街でお店を営んでいて感じることなどを聞かせていただいています。つまり故郷の呉で、ディレクターとは違う形で「街で出会った人の、すれ違うだけでは知り得ない想いや考えを聞く仕事がしたい」という中学時代の夢が叶っているんですよね。これは自分でも予想外でした。

また、地元を盛り上げたいと考える若い人が多く、彼らによって多彩なジャンルの企画や取り組みが生まれていることもUターンしてから知りました。これまで地域活性化といえば強力なリーダーが皆を引っ張って、大きな事業を大人数で成し遂げる…というやり方が主流だったように思いますが、最近は「こんなことがやりたい」と誰かが声を上げたらそれに共感する数人が軽やかに乗ってくれて、小規模でもすぐに実現できるムードに変わりつつある。呉の街がもっと面白くなる気運を感じています。

呉をどんな街にしていきたいですか?

私はとにかく、住んでいる人が楽しいと思える街にしたくて。そのためには「多様性」が必要だと思うんです。各々が興味のあることを自由にできる地域のほうが、絶対に楽しいじゃないですか。呉の人は地元のことを「呉なんか何もない」と言いますが、それは根拠のない思い込みで、実際には面白い人や場所はたくさん存在しているんですよ。こうした思い込みが閉塞感を生み出してしまうと思うので、一度呉を出ているからこその客観的な視点で外からの風を取り込んで空気をかき混ぜて、多様性のある街に「発酵」させていきたいですね。

若い人たちが楽しく過ごせるだけでなく、ここで懸命に生きてきた祖父母や親世代の方々が一生を終えるとき「昔は良かった…」ではなく「やっぱり呉はええとこじゃね」と思ってもらえる街にするのが理想です。その一環として、今後は地域に根付いた文化や芸術を守る活動をしたいと考えています。

小野さんの おすすめスポット

【呉港が見渡せる公園】

行き交う船、造船所、自衛艦、解体されゆく製鉄所、島を見ていると、世界につながる街なんだなあと思います。『呉海上花火大会』で花火を見るときの穴場スポットでもあります。

【幸町・入船山エリア】

美術館通りと呉市立美術館、美術館前の庭園『故山苑』、少し歩いた先の木造建築『呉YWCA』。
静かで落ち着く、まちなかのchillスポットです。『故山苑』は足立美術館(島根県)の庭園設計をした中根金作さんの作庭。

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