2004年 大阪府・広島市⇒呉市焼山
広島県呉市出身 Uターン
株式会社マウントペック 代表取締役/NPO法人昭和地区まちづくり協議会 理事
呉の中心市街地から車で約20分。呉北西部の山あいにある街・焼山。この街で生まれ育った村山さんは、2004年に大阪からUターン移住。フリーの編集者・ライターとして観光情報誌や企業が発行する冊子などを制作しています。その傍ら、アメリカで買い付けた子ども服のショップ『Mt.Pec』を営みながら、NPO法人昭和地区まちづくり協議会の理事を務め、地域の広報紙制作やまちづくり活動に精力的に取り組んでいます。「仕事とプライベートを切り分けず、ごちゃまぜの焼山ライフを楽しんでいます」と朗らかに笑う村山さんに、焼山の魅力や地域活動の醍醐味を教えてもらいました。
焼山に移住した経緯を教えてください。
もともと焼山の出身で、高校まで地区内の学校に通っていました。広島市内へ行くのも月に1度くらい、高校生の頃までは呉市街地と焼山が中心だったので「高校を卒業したら絶対に都会へ行く!」と思っていました。そして大阪の大学に進学し、そのまま大阪でファッション誌を手がける出版社に就職しました。当時はアメカジファッションの全盛期。私もアメカジが大好きだったので、ファッション誌の編集や創刊を経験できたのは嬉しかったです。仕事はものすごくハードでしたけど(笑)
都会で多忙な日々を送る中で「やっぱり焼山が好きだから、いつかは帰ろう」と考えるようになりました。進学や就職で地元を離れていた友達や、長年海外に勤務していた父が焼山に戻ってきていて、里心がついたのもあるかな。2004年に7年間暮らした大阪から焼山に帰ってきました。25歳のときですね。
Uターン移住してからの仕事や生活について教えてください。
帰ってすぐは実家でのんびりと田舎暮らしを満喫していたのですが、広島市のタウン情報誌から声をかけてもらったことをきっかけに、県内を中心にフリーライターとして活動するようになりました。大阪時代は憧れの存在だった全国誌から広島のファッションスナップやショップ紹介ページの仕事をいただくこともあり、同業者が少ない地方だからこそ巡ってくるチャンスもあるんだなと感じました。
27歳で同じく焼山出身の夫と結婚しました。私も夫も仕事で広島市内に出向くことが多かったので、一時的に焼山から広島市に引っ越したんです。転居先は国道沿いで利便性は良かったものの、排気ガスが気になって窓を開けられませんでした。28歳で1人目の子どもを出産し、自然豊かで空気がきれいな焼山で子育てしたいと思い、家族で再度Uターンしました。焼山に戻った後、30歳で2人目の子どもを出産し、ライターの仕事も変わらず続けていました。当時3歳と1歳の子どもたちを保育園に預けながら、夫婦で育児と仕事に奮闘していましたね。
焼山に『Mt.Pec』を開業した経緯と、開業して感じることは?
夫はアメリカのカルチャーが好きで、自分や子どもが着る服をアメリカから個人輸入していたんです。そのうち周囲の人から「その服どこで買ったん?」「うちの子にも着せたい!」と言ってもらうことが増え、アパレルショップを開こうと決めたんです。友人も一緒に働いてくれることになり、アメリカで買い付けた子ども服を取り扱うお店『Mt.Pec』を、ここ焼山で開店しました。その後、夫が本業(塗装業)の倉庫として購入していた築100年以上の古民家を改装し、2020年に移転オープンしました。
車でしか来られないような山の中にある店なのに、ありがたいことに「他にはない服に出会える」と呉市内や近隣市町をはじめ、山口県や福岡県からもご来店いただいています。「古民家×アメリカン」という組み合わせも面白がっていただけているのかも。特色ある店づくりを心がけていますが、こんな山奥まで目的地としてお客様に足を運んでいただいていることを嬉しく思います。地域の方々も気軽に遊びに来てくれて、焼山在住の頼もしいスタッフたちが中心となって毎日楽しく営業しています。
村山さんが思う、焼山の魅力は?
みんながゆったり暮らしているところですね。道路やスーパーの敷地が広々としていて、運転や買い物がしやすいこともあると思います。車社会なので自動車免許は必須ですけどね。広島市内から車で40分、呉の中心市街地から車で20分ほどの山間部にある焼山は、ベッドタウンとして発展した街。スーパーやドラッグストアが多くて生活物価が安く、利便性の高さに比べて土地も安いので、空き地ができてもすぐに新しい家が建つんです。大病院はないけれど、医院の数は充実していると思います。
そして何といっても、子育てがしやすい! 焼山は呉市内でも子どもの数が多いエリアなので、私立の保育園、幼稚園、子ども園がたくさんあるんです。乳幼児のオープンスペースも各園で開催されています。地域の方々も親切で、赤ちゃん連れのママパパや思春期の子どもたちに温かく接してくださいます。うちの子はスケートボードをやっていて、親としては「うるさいかな…?」と心配だったのですが、ご近所さんが「上手いねえ!」「ちょっとやって見せて!」と褒めて、受け入れてくださるのがありがたくて。それから『焼山公園』という大きな公園ではスケボーを楽しむ人が自然と集まって、地域の大人が子どもたちに教えてくれるという世代間交流が生まれているんですよ。
私はUターン移住者なので子どもの頃からの顔見知りが多いですが、Iターンの人も溶け込みやすい地域だと思います。先ほど言ったように空き地ができたらすぐに転居者が入り、海上自衛隊(呉市幸町)と陸上自衛隊(広島県海田町)の真ん中に位置するエリアなので、自衛隊のご家族もたくさん暮らしています。移住者に寛容な土地柄で子育て世帯も多い焼山は、Iターン移住者でも地域参加しやすく、ママ友も作りやすいと思いますね。
地域との関わりについて教えてください。
焼山がある昭和地区で月1回発行している広報紙『きよみん通信』の制作に2018年から携わっています。「もっと若い世代に読まれる紙面にリニューアルしたい」と考えていた発行元のNPO法人昭和地区まちづくり協議会から、編集の仕事をしていた私に「企画を考えてくれないか」と声をかけてもらったのが始まりですね。そこから昭和地区の人やお店を訪ねて地域の魅力を深堀りする連載コーナーを立ち上げ、毎月取材・執筆・紙面デザインするようになりました。
現在は広報紙全体の編集も担当させてもらっています。昭和地区に全戸配布される『きよみん通信』を通して、住民の皆さんが知りたい情報や、皆さんに知っておいてほしい情報を伝えていきたいですね。ちなみに「きよみん」は、昭和地区のイメージキャラクターの名前です。
そのほか、親子3世代が暮らしやすいまちを目指す昭和地区で行われるイベントなど、さまざまな取り組みに参加させてもらっています。『きよみん通信』はお仕事として請け負っていますが、地域活動は仕事ではなく暮らしの一部なんですよね。若い頃は仕事してなんぼと思っていましたが、焼山の人たちを見ていて気付いたんです。例えば農家さんは地域行事にお米を提供して、木工が得意なおじいちゃんは子どもたちにものづくりを教えている。そんな風に、それぞれができることを持ち寄って地域を良くしていけばいいんだって。私もその一員なんだと思ったら、気持ちがラクになりました。
それに、一緒に活動している方々がお店の宣伝をしてくれたり、店の薪ストーブ用の薪を持ってきてくれたりと、お金じゃない部分でたくさんのサポートをいただいているんですよね。「私も自分のできることで、焼山のいろんな地域活動を手伝おう!」「どんなまちにしていきたいのか」などと考えるようになり、今ではまちづくり協議会の理事という肩書きを与えてもらったことで、さらに地域の方々と話がしやすくなりました。
今後やりたいことは?
焼山には保育園や幼稚園が多い分、親子向けのイベントもたくさんあるのですが、いかんせん発信元がバラバラで情報をキャッチするのが難しいんですよね。まちづくり協議会として、子育てに関する情報が一つの場所に集まる仕組みを作ろうと考えています。仕組みさえ整えておけば、この先「子育てがひと段落したら何かやってみたい」という人も関わりやすいだろうと思っていて。
この冬から「こどもまんなか食堂」も始めました。私自身が運営する場所だけではなく、約3万人が暮らす昭和地区のあちらこちらで「やりたい!」と思った地域の方が立ち上げられるよう、これもまた仕組みも同時に考えていきたいと思っています。私も10~20年後はまた違う地域課題に取り組んでいるはずなので、ほかの誰かに引き継いでもらいながら、子育て情報の拠点を維持できたらなと。
それと今後はスナックを開いてみたいですね! 焼山には遅くまで飲めるスナックが少ないし、私自身、人の話を聞くのが好きなので。地域のことをやるのはすごく楽しくて、もはや趣味になっています(笑)。「物好きだね」と言われたりするけれど、私はここで年老いていくわけで、「焼山には何もない」と嘆いていても仕方がない。自分たちの手で、もっと暮らしやすく、もっと面白い焼山を作っていきたいんです。夫もそんな感じですし、地域のことを考える中で、同じ想いを持った仲間にもたくさん出会えました。人のネットワークを大切にしながら、これからも楽しくまちづくりをしていきたいです。
呉に移住を検討している人に伝えたいことはありますか?
これから移住する人は、市主催の『リノベーションスクール』や創業セミナーに参加することをおすすめします。横の繋がりがどんどんできますよ。私も第1回目のリノベーションスクールに参加して、一緒に参加した友人やそこで出会った仲間と『waremokou』というお店を市役所通りにオープンし、現在は『呉まちなか公共空間デザイン会議』の委員として参加させてもらってます。
事業者へのサポートが手厚いところも呉の魅力です。商工振興課の職員さんが自分ごとのように伴走してくれて、いろんな人とのご縁を繋げてくれて…。新しく事業を始めるとき、どれだけ心強かったか! 職員さんは柔軟に対応してくれるので、気になることがあれば気軽に相談してみたら良いと思います。
村山さんの おすすめスポット
【灰ヶ峰】
夫婦だけで過ごす時間も増えてきて、ちょっと時間ができるとそれそれのバイクに乗って一緒に灰ヶ峰へ行きます。夜景が有名ですが、呉の町並みと瀬戸内海が一望できる昼間の景色も好きです。