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移住者インタビュー

カヌーと、自然と、暮らしやすさ。蒲刈で見つけた理想の毎日

鬼塚 一夢さん

2018年 東京都→島根県→広島市→呉市下蒲刈町
熊本県出身 Iターン
呉市蒲刈B&G海洋センター マリンインストラクター
家族3人

interview:2025.07.16

熊本県で生まれ、カヌー競技の国際大会で優勝した経験もある鬼塚一夢さん。これまで広島市内や静岡県の西伊豆でカヌーの仕事に携わってきました。島暮らしへの憧れを抱く中で出会ったのは、7つの島々がつながる、安芸灘とびしま海道の蒲刈です。

「自然」と「暮らしやすさ」のバランスに惹かれ、2018年に家族3人で下蒲刈島に移住。現在は上蒲刈島の『呉市蒲刈B&G海洋センター』でカヌーのインストラクターを務めています。「ここは理想の環境」と語る鬼塚さんが見つけた、蒲刈の魅力とは?

鬼塚さんの経歴を教えてください。

私は熊本県出身で、高校時代にカヌー競技と出会いました。高校卒業後はカヌー部がある東京の大学に進学し、競艇場のある埼玉県に暮らしながら、練習に励む日々でした。日本代表選手としての世界大会出場や、大学生のアジア大会で優勝を経験するなど、青春の日々をカヌー競技に捧げてきたんです。
 
社会人になってからは、カヌーの競技場がある島根県で大工の見習いとして働きはじめました。休日にカヌーを楽しみながら生活しようと考えていましたが、職人の世界は忙しく、仕事とプライベートの両立に悩んでいたんです。そんな折、広島市の商業施設にあったアウトリガーカヌークラブのスタッフを打診され、配達員と兼業しながら働き始めました。

蒲刈を移住先に選んだ理由は?

広島市でカヌークラブのスタッフとして働いて5年ほど経った頃、同じくカヌーで海外レース出場経験もある妻と結婚。娘が生まれたことで、これからの生き方を考え直した時に「自然豊かな島で暮らしたい」と考えるようになりました。
 
当時、静岡県西伊豆でカヌーのガイドの仕事をするため、夏の期間だけ西伊豆に滞在するという2拠点生活を送っていたんです。西伊豆は自然豊かな土地で、海の近くで暮らすことへの憧れもますます膨らみました。

しかし、カヌーのインストラクターだけでは食べていくのが難しく、家庭との両立を図るのは、決して簡単ではありませんでした。そのため、広島市にいる間は建築関係から花屋までいろいろな仕事を経験しました。どの仕事にも面白さがあると知りましたが、やっぱり自分がいちばん好きなのは「漕ぐこと」なんですよね。それを活かせる仕事に就きたいという思いもずっと抱いていました。

自然を感じながら子育てをしたいけど、雄大な自然を求めると離島や僻地になってしまい、自分は良くても子供の将来を考えた時に負担になるかもしれない。その点、西伊豆は手つかずの自然が残っていて生活圏も身近。大好きな場所で移住を考えはじめていました。

その頃に、知人から呉の上蒲刈島にある『呉市蒲刈B&G海洋センター』で、カヌーを教えられる職員を募集していると聞いたんです。見学に訪れてみると、蒲刈は豊かな海と山に恵まれており、なおかつ、瀬戸内海の穏やかな環境は、初めての人にもカヌーの楽しさを体験してもらうには最適な場所でした。優しい海と、人と自然が調和して生きてきた証が文化として息づいており、その魅力に惹かれました。
 
しかも車で「とびしま海道」を渡れば、30分ほどで医療や教育施設が整った呉市街地に行ける。自然と暮らしやすさのバランスがとても良く、さらにカヌーに関わる仕事もできるここは、まさに理想的な環境でした。加えて、妻の実家がある広島県内から出ずに島暮らしが実現できるという安心感もあり、迷わず移住を決めました。

移住にあたっての苦労はありましたか?

最初に苦労したのは、家探しですね。西伊豆から広島市に戻ってきて1ヶ月後には蒲刈へ引っ越す予定が、そのときは不動産情報が1件も出ていなくて…。最終的には、現地の知り合いの紹介で、今の家が見つかりました。

下蒲刈島にある戸建てで、3人家族にはちょっと広すぎるくらいの家に賃貸形式で暮らしています。我が家の場合は急ピッチでの移住でしたが、家探しはご縁なので、焦らずじっくり探すのが良いと思います。

それから、とびしま海道にはコンビニが1件もありません。私が住んでる島にはスーパーもないので、基本的には自炊生活。便利なものが近くにあるとついつい手を出してしまいますが、ない環境では計画性をもって生活することができます。「手をかける暮らし」を求めている人にはぴったりですよ。

不便さが、自分でやってみるきっかけになり、おもしろさに変わっていく。大工の経験を活かして家の不具合も自分で直したり、より住み心地の良い家づくりを楽しんでいます。

蒲刈に移住して良かったことは?

目の前に広がる海で魚が釣れて、野菜は自分たちで育てたり、ご近所さんからおすそ分けをいただいたり…。新鮮な魚と野菜を毎日食べられるのは、街での暮らしにはなかった魅力ですね。何より、通勤が海景色なのは最高ですよ! 通勤ラッシュの満員電車や渋滞とは無縁で、心に余裕をもって出勤できます。

自宅から道路を挟んで海なので、休みの日には朝、窓を開けて海を見て、季節や天候に合わせて「釣りに行こう」「畑に行こう」など自然に合わせた生活ができる。私にとっては、何でもそろった便利な街よりも、日々移ろう自然に囲まれた島のほうが生きやすいと感じています。必要なものはインターネットでも購入できるので、困ることはないですね。

島での仕事について教えてください。

『呉市蒲刈B&G海洋センター』ではカヤックやSUPのツアーガイドとして働いています。夏は個人向け、春・秋は修学旅行生向けのガイドが中心です。参加される方の7~8割は初心者なので基礎から丁寧に教え、絶景ポイントを巡りながら蒲刈の海を案内していきます。

ちなみにカヤックはカヌーの一種で、初めての人でも安心して楽しめるんですよ。マリンスポーツは夏のイメージが強いですが、紅葉の秋や空気が澄んだ冬の「海上散歩」はまた格別です!私は雪が舞う中で漕ぎ出すのも好きなくらいです(笑)。とはいえ、冬はどうしても閑散期になるため、施設全体の点検や多種多様な備品のメンテナンスをおこなっています。

また、呉市内の子どもたちに向けて月に1度、郷土学習も兼ねた「蒲刈 海の学校」も開催しています。海遊びはもちろん、サツマイモの苗植えや収穫、餅つきなど季節に応じた体験を通して、子どもたちが地元の魅力に気付くきっかけになればうれしいです。

蒲刈の魅力は、手つかずの浜や岩場が多く残っているところ。人工的なものがない、そのままの自然を五感で味わうと、人間は本来、深く安らげると思うんです。海の上に漕ぎ出せば、誰もが笑顔になるんですよね。最初は乗り気じゃなかった親御さんがお子さんよりはしゃいだり、外国人の方もジェスチャーで「すごく美しいね!」と伝えてくれたり…。世代や国籍を問わず、島の自然に触れて喜んでもらえる瞬間を見ると、大きなやりがいを感じます。自分が本当に「良い」と思うものをお客様と共有できることに、心から満たされるんです。

現実的な話として、蒲刈に限らず、田舎で都会と同じかそれ以上の収入を得るのは難しいかもしれません。ただ、島暮らしはお金を使う場面が少なく、固定費以外はあまりかかりません。その分、子どもの経験や遊びにはしっかり投資し、生活にメリハリをつけられます。

子育てや地域との関わりについて教えてください。

娘は現在小学生で、島の保育所を経て小学校に通っています。全校生徒は約40人で、1学年は10人弱と小規模。だからこそ子どもたちは学年を超えた優しいつながりができて、保護者同士も仲が良く、声をかけ合いながらみんなで子育てしている感覚があります。
 
私たちが住む地域は人口が少なく、地区長を住民が1年交代で務めており、今年度は私がその役目を経験させていただいています。会議や行事は休日におこなわれることが多いためサービス業との両立は大変ですが、相談すれば先輩方がサポートしてくださるおかげで何とかなります。一人で抱え込まず、どうしてもできないことがあれば周りに頼ることで、結果的に楽しく活動できると感じますね。

特に、島のお祭りは地域の人みんなが楽しみにしている一大行事なので、きちんと関わっていきたいです。こうした活動が地域に溶け込み、お互いを理解し合える機会にもなります。

今後、やってみたいことは?

2年前から取り組んでいる農業を軌道に乗せたいと考えています。スポーツの経験から体づくりや健康を考えたときに作物への興味が湧き、無農薬・自然農法を目指して耕作放棄地を開墾し、ミカンや野菜を育てています。今は施設の売店で手頃な価格で販売していますが、同じように健康に関心あるの方々へ届けていけたらと思います。

未経験からの農業は手探りで大変ですが「この地域ならではの生き方」のモデルを作っていきたいですね。昔からこの島で丁寧に暮らしてきた人たちが残してくれたものを、大切にしながら活かしていく。それが島の魅力となったら嬉しいです。
島での暮らしは、生きていくために本当に必要なものを肌で感じられます。私自身、移住してから「生かされている!」という実感があり、毎日充実しています。私たちの姿を見て、自然豊かな島でやりたいことを生業にする生き方に興味を持つ人が増えればうれしいです。


鬼塚さんのお気に入りスポット

【広島県立 県民の浜】
「日本の渚百選」にも選ばれたビーチに、広大な緑のグラウンド。圧倒的な開放感の景色が広がります。ここでは、ゆったりした時間を過ごすのがおすすめ。宿泊施設や温泉もあるので、心ゆくまで寛ぐことができます。

【呉市蒲刈B&G海洋センター】
県民の浜内にあり、カヤック&SUPツアーだけでなく、併設の体育館やプールも利用できます。都市部よりも予約が取りやすく、利用者が少ない日には、家族や団体で貸し切り状態になることもあります。穴場スポットとして、広島市内から訪れる方もいらっしゃいますよ。

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