こんにちは!市民ライターの北裕実です。
私は、現在は東広島市に住んでいますが、数年前まで呉市で暮らしていました。今も、子どもの習い事などで定期的に呉市に通っています。
さて、呉は、「秋祭り」がとても盛んな地域。秋には市内40以上の地域で祭りが行われ、おみこしやお囃子の音色がまちを包みます。
今回は、そんな呉市の秋祭りを実際に見て感じた、地域のつながりや温かさについてご紹介します!
呉の秋祭りを象徴する「ヤブ」の存在
呉市では、9月中旬から11月初めにかけて各地で秋祭りが行われます。おみこしが街を練り歩き、笛や太鼓のお囃子が響き渡ります。注目を集めるのは、呉独自の「ヤブ」と呼ばれる鬼の面をつけた存在。地域ごとに祭りがあるため、毎週どこかでヤブの姿を見かけます。
広島市から移住した私は、秋祭りにはあまり馴染みがありませんでした。けれど、呉に住んでからは、街のあちこちに幟(のぼり)が立ち始めると、「お祭りの季節が来たんだな」と身近に感じるようになりました。
小学生から高校生までが支える、祭りのお囃子
先日、呉市警固屋(けごや)地区の秋祭りを見に行く機会がありました。
警固屋の秋祭りに興味を持ったきっかけは、地元のお菓子屋「御菓子処つくし」の店員さんの言葉でした。仕事の打ち合わせのあと、「この後、笛の練習があるんですよ」と言われたのです。
この地域では、お囃子の笛や太鼓を担当するのは、地域の子どもたちだそう。店員さんも、小学生の頃から放課後に集会所へ行き、仲間たちと一緒に笛を練習していたと教えてくれました。
担い手不足の時期もありましたが、新しく移住してきた人や近隣の方にも声をかけ、関わる人を増やしていったとのこと。本番では、堂々とお囃子を奏でる子どもたちの姿が印象的でした。
迫力満点!ヤブとおみこしのぶつかり合い
祭り当日、警固屋では2つのおみこしがそれぞれ地域を巡り、最後に神社に集結しました。神社の鳥居の前には、ヤブが待ち構えています。
ヤブは、雄々しい鬼の面をつけ、縄を背負った姿。神様の道案内をするとも、お供え物の米俵を検品しているとも言われています。
おみこしが鳥居をくぐろうとすると、ヤブが力いっぱい押し返します。おみこしを担ぐ人々は、ヤブに負けじと押し進もうとします。
何度も何度もぶつかり合い、見ているこちらまで手に汗を握るほどの迫力。ここが祭りのクライマックスで、観客からは「がんばれ!」と大きな声援が飛び交います。
そしてついに、ヤブを押し切り、おみこしが鳥居をくぐりました。
その瞬間、周囲から大きな拍手が起こります。これぞ、地域が一体となる瞬間!
地域がつくる、温もりあふれる祭りの風景
最後はお待ちかねの「餅まき」。さっきまで勇壮に戦っていたヤブたちが、今度はお餅を投げてくれます。子どもたちは必死に手を伸ばし、大人たちも一緒になって楽しんでいる姿が微笑ましかったです。
今では餅まきを体験する機会は少なくなりました。でも、呉ではこうした伝統が今も受け継がれ、地域の子どもたちが当たり前のように祭りに関わっています。
境内ではおでんや焼きそばなど手作りの出店が並ぶ
お祭りのお菓子がかわいくてイラストに描きました!
呉の秋祭りが、子どもたちの思い出になる
祭りの間中、ずっと笛を吹き続けていた子どもたち。その姿は、誇らしげで、とても頼もしく見えました。
呉市の秋祭りは、単なる行事ではなく、地域のつながりを育む大切な時間。世代を超えた交流の楽しさや、新しく移住してきた人を自然に受け入れる温かさも感じました。こんなお祭りに子どもの頃から関われるっていいな、と思います。